ジンクス~第一章:ジンクス01

 

僕にはジンクスがある。
僕は好きになった人は僕以外の人と幸せになる。
正直言って嬉しくないジンクスだ。
「好きな人が幸せで居てくれるなら、それでいい」
そんな考えの人もいるだろう。
だけど、このジンクスには欠点がある。
僕が、その人の事を好きでなくなった時。
その幸せは、終わりを迎える。
好きな人には、ずっと幸せになって欲しい。
だから今、僕が好きな人は4年程変わっていない。
その人の涙を見たくないから……
だから、今でも僕はその女の子のことが好きなんだ。
恐らく子の好きって気持ちは変わらないだろう。
なにがあっても変わらないだろう。

ジジジジジジジジジジ……

目覚まし時計が低い音で鳴り響く。
僕は、重い体を起こし時計を見る。
5時50分。
そろそろ起きなくちゃ。
学校だ……
でも、もう少し……
「あと少しだけ」
僕は、小さく呟く。
「あと少しじゃない!
 今すぐ起きなさい!」
大きな声と共に僕の布団が剥ぎ取られる。
僕は、眠い体を起こしその声の方を見た。
小柄で可愛らしい女の子が、僕の方を見る。
「あ……
 美紗……」
この子の名前は、葛城 美紗。
僕の幼馴染み。
そして、僕がずっと好きな女の子。
「はぁ……
 一、そろそろ学校に行かないと遅刻するよ?」
「遅刻……?」
僕は、首を傾げて、美紗の方を見た。
「そう、遅刻!」
美紗は、怒鳴って僕の方を睨む。
「睨まないでよ……
 僕の事より、護の事はいいの?
 付き合ってるんでしょ?」
「護は、アンタと違って、もうとっくに起きてるわよ!
 一足先に学校に向かったわ!」
美紗は、そう言って僕の体を揺らす。
「わかった……
 わかったよ……
 起きるってば……」
「さっさと起きるの!」
美紗が、怒鳴る。
もう、本当に五月蠅いや……
僕は、基本かまってちゃん。
だけど、必要以上にかまわれるのは嫌いなんだ。
なんてことは言えず、僕は再び顔を枕にうずめる。
「コラ!
 起きる!
 今から、朝ご飯作るから!
 アンタは、その間に着替えるの?
 わかった!?」
「……うん」
美紗が、部屋を出る。
僕は、ゆっくりと体を起して背伸びする。
「起きるか……」
僕は、タンスの扉を開け、制服を取りだした。
制服に着替えると自分の部屋を出て階段を降りた。
階段に向かうと良い香りがした。
僕の大好きなハムエッグの匂いだ。
「ほら!
 突っ立ってないで早く食べなさい」
「うん」
目の前に大好きなハムエッグを目の前に出されて、途端に機嫌が良くなる。
僕って、案外子供なのかも知れない。
僕は、トーストの上にハムエッグを乗せるとそれを一気に頬張った。
「コラ!
 お行儀が悪い!」
「そっかな?
 トーストとハムエッグが、あったらこうしたいのが男だと思う!」
「少なくても護は、そんなことしないよー?」
「護が紳士なだけだよ」
「一も紳士になれば?」
「ぁぅ……」
ぐぅの根も出ません。